石油精製とは?分留の仕組みを解説!(分別蒸留・歴史・温度・図)
私たちが使うガソリン、灯油、軽油、プラスチックの原料は、地下から採れた原油をそのまま使っているわけではありません。
原油には性質の異なる多くの炭化水素が混ざっているため、用途に合わせて取り出す石油精製が必要です。
中心となる操作が分留であり、成分ごとの沸点の違いを利用して分ける方法です。
この記事では、石油精製の意味、分別蒸留の仕組み、歴史、温度と製品の関係を順に解説します。
図のような流れを意識すると、製油所で行われる複雑な工程も理解しやすくなるでしょう。
石油精製と分留の基本的な仕組み

それではまず石油精製と分留について解説していきます。
原油を用途別の製品へ分ける石油精製
石油精製とは、原油を加熱して成分ごとに分け、燃料や化学製品の原料として利用できる形に整える技術です。
原油は黒っぽい液体に見えますが、分子の大きさや沸点が異なる炭化水素が多数混ざった混合物です。
そのまま燃やすだけでは、車の燃料、航空機の燃料、暖房用燃料など、用途ごとに求められる性質を満たしにくくなります。
石油精製ではまず原油を蒸留し、沸点の近い成分をいくつかのグループに分けます。その後、必要に応じて不純物を除いたり、分子の構造を変えたりします。
たとえば、家庭で料理酒からアルコールを完全に取り出すことは難しいものの、加熱によって蒸発しやすい成分が先に気体になるイメージは、石油精製の理解にも役立ちます。
ただし製油所では、家庭の調理とは比べものにならない高温と大量の原油を、厳重に管理された設備で扱います。
分けられた製品には、ガソリン、ナフサ、灯油、軽油、重油などがあります。
ナフサは自動車に直接入れる燃料ではなく、プラスチック、合成繊維、洗剤などをつくるための重要な原料です。
原油に含まれる成分を用途別に取り出し、社会で使いやすい製品へ変える一連の工程です。
石油製品は身近な燃料だけでなく、医療用品、包装材、道路舗装材などにもつながっています。
原油から何を多く得るかは、原油の性質と社会が必要とする製品の量によって変わります。
沸点の差を利用する分留の原理
分留は、沸点の違いを利用して、混合物を複数の成分群に分ける方法です。
液体を加熱すると、沸点が低い成分ほど先に蒸発して気体になりやすくなります。
原油では分子が小さい成分ほど沸点が低い傾向があり、分子が大きくなるほど高い温度が必要になります。
しかし、原油の成分は明確に一つずつ沸騰するわけではなく、近い温度範囲で少しずつ蒸発します。そのため製油所では、沸点の近い成分をまとめた留分として回収します。
この操作で得られる留分には、石油ガス、ガソリン留分、灯油留分、軽油留分、残油などがあります。
分留で重要なのは、蒸発した気体を冷却して再び液体に戻すことです。
気体になった成分をそのまま逃がすのではなく、温度に応じた位置で液体として集めることで、製品のもとになる留分が得られます。
低い温度で蒸発しやすい成分は塔の上側へ進みます。
高い温度が必要な成分は下側に残りやすくなります。
ここでいう温度は成分が回収されるおおよその温度範囲であり、単一物質の正確な沸点と同じ意味ではありません。
分留は原油だけでなく、液体空気から窒素や酸素を取り出す場面でも使われます。
混合物を成分ごとに扱うための、化学工業で広く用いられる基本技術です。
常圧蒸留装置における分留塔の構造
分留塔は、下部ほど高温で上部ほど低温になるようにつくられた縦長の装置です。
原油は加熱炉でおよそ350℃前後まで温められ、液体と気体が混ざった状態で塔の下部へ送られます。
塔の内部には棚板や充填材があり、上昇する蒸気と下降する液体が何度も接触できる構造です。
蒸気が上へ進む途中で冷えると、沸点が比較的高い成分は途中で液体へ戻ります。一方で沸点が低い成分は、より上の低温部分まで蒸気として進みます。
この繰り返しによって、成分は沸点に応じた高さへ集まりやすくなります。
図として流れを簡単に表すと、原油は加熱炉から塔の下部へ入り、蒸気は上向き、液体は下向きに移動します。
原油 → 加熱炉 → 分留塔の下部
上側 → 石油ガス、ガソリン留分
中ほど → ナフサ、灯油、軽油留分
下側 → 重油成分、残油
塔の各高さから取り出す液体は、側線留出油と呼ばれます。
たとえば灯油留分は塔の中ほどから、軽油留分はそれより下の位置から取り出されるのが一般的です。
分留塔の高さだけで成分が完全に決まるわけではなく、圧力、温度、原油の種類、運転条件も回収される範囲に影響します。
そのため製油所では、温度計や流量計を用いて状態を常に確認しながら運転しています。
石油精製の歴史と製油所の発展
続いては石油精製の歴史と製油所の発展を確認していきます。
灯火用燃料から始まった石油利用
近代的な石油精製は、19世紀に灯火用の灯油を安定して得る必要から大きく発展しました。
電気照明が広く普及する前は、夜を照らすためにろうそく、植物油、動物油などが使われていました。
石油から得られる灯油は、適切に精製すれば明るく燃えやすく、大量供給にも向く燃料として注目されました。
初期の蒸留では比較的単純な装置が用いられましたが、原油の利用量が増えるにつれて、成分をより細かく分ける技術が必要になりました。その要求が分留装置の改良につながります。
自動車が普及すると、ガソリンの需要が急速に高まりました。
原油から自然に得られるガソリンだけでは需要を満たしにくいため、重い成分を分解して軽い成分へ変える技術も発展しました。
石油精製の歴史は、単に燃料を取り出す歴史ではありません。
照明、自動車、航空、化学工業という社会の変化に合わせて、必要な製品の比率を調整してきた歴史でもあります。
灯油が重要だった時代から、ガソリン、軽油、航空燃料、石油化学原料を重視する時代へ移り変わっています。
現在は燃料の品質向上に加え、二酸化炭素排出量の削減や資源の有効利用も重要な課題です。
製油所は社会のエネルギー需要と環境への配慮の両方に対応する設備へ進化を続けています。
蒸留から化学変換へ広がる工程
現代の石油精製は、分留で分ける工程と、分子を変化させる工程を組み合わせて行われます。
分留だけでは、原油に最初から含まれている成分の割合を大きく変えることはできません。
そこで、需要の少ない重い成分を分解し、需要の多い軽い成分を増やす技術が使われます。
代表例の一つが分解であり、大きな炭化水素分子をより小さな分子へ変える反応です。こうした工程はガソリンの原料や石油化学原料を増やす役割を持ちます。
逆に、小さな分子をつなげたり、構造を整えたりして、燃料として使いやすい性質に変える工程もあります。
さらに、原油に含まれる硫黄分などを減らす脱硫も重要です。
硫黄分が多いまま燃料を燃やすと、大気汚染や設備の腐食につながるおそれがあるため、品質基準に合わせた処理が求められます。
分留は石油精製の出発点ですが、それだけで最終製品が完成するわけではありません。
分ける、変える、きれいにするという複数の工程が連携して、用途に適した石油製品がつくられます。
工程ごとの役割を区別すると、分留と分解を混同しにくくなります。
分留は主に沸点差による物理的な分離であり、分解は化学反応によって分子そのものを変える操作です。
日本の製油所と石油供給の流れ
日本では海外から輸入した原油を製油所で精製し、各地の需要地へ石油製品を供給しています。
原油は大型タンカーで運ばれ、港に近い製油所の貯蔵タンクへ受け入れられます。
その後、原油の種類や製品需要に合わせて精製され、タンクに保管されたのち、タンクローリー、船舶、パイプラインなどで輸送されます。
ガソリンスタンドへ届くガソリンも、このような長い供給の流れを経た製品です。
一方で、すべての製品を同じ製油所だけでつくるわけではありません。
地域の需要、設備の種類、原油価格、季節による灯油需要などを踏まえ、製油所間や物流拠点間で製品を融通することもあります。
冬に暖房用の灯油需要が高まりやすいことは、季節が精製と供給の計画に関わるわかりやすい例です。
また、災害時にも燃料供給を維持できるよう、備蓄や輸送網の整備が進められています。
石油精製を学ぶ際は、塔の中で成分を分ける場面だけでなく、原油の受け入れから製品の配送までを見ることが大切です。
製油所は化学工場であると同時に、社会のエネルギー供給を支える物流拠点でもあります。
分留温度と石油製品の種類
続いては分留温度と石油製品の種類を確認していきます。
温度範囲で変わる留分の特徴
分留で回収される留分は、沸点の低いものほど塔の上側、高いものほど下側で得られやすくなります。
石油ガスは比較的低い温度で気体になりやすく、塔の上部から取り出される成分です。
ナフサやガソリン留分はその下に位置し、燃料や石油化学原料として利用されます。
灯油留分は暖房用燃料や航空燃料の原料として重要であり、軽油留分はディーゼル車や一部の産業用機械の燃料に使われます。
さらに高い温度で扱われる重い成分は、重油、潤滑油、アスファルトなどにつながります。
ただし、下の表にある温度は製品が必ずその一点で沸騰するという意味ではありません。原油の種類や設備条件によって幅があるため、目安として理解することが大切です。
| 留分 | 回収されやすい温度範囲の目安 | 主な用途 | 塔内の位置 |
|---|---|---|---|
| 石油ガス | およそ30℃以下 | 燃料用ガス、化学原料 | 最上部 |
| ナフサ | およそ30℃から180℃ | 石油化学原料、ガソリン原料 | 上部 |
| 灯油留分 | およそ150℃から250℃ | 暖房用燃料、航空燃料原料 | 中ほど |
| 軽油留分 | およそ200℃から350℃ | ディーゼル燃料、産業用燃料 | 中下部 |
| 残油 | およそ350℃以上 | 重油、潤滑油原料、アスファルト | 下部 |
温度範囲が重なっているのは、留分が単一の物質ではなく、複数成分の混合物だからです。
製油所では求める品質に合わせて、回収範囲を細かく調整します。
分子の大きさと沸点の関係
炭化水素は一般に分子が大きくなるほど分子間の引力が強まり、沸点も高くなる傾向があります。
メタンやプロパンのような小さな分子は常温で気体になりやすく、燃料用ガスとして扱われます。
一方で、炭素数が増えて分子が大きくなると、常温では液体になりやすく、さらに重い成分は粘り気を持つようになります。
この性質の違いが、分留塔の中で成分が異なる高さに集まる理由です。
身近な例では、ライター用の燃料に使われる液化石油ガスと、道路に使われるアスファルトを比べると、蒸発しやすさが大きく異なります。
前者は比較的低い温度で気体になりやすく、後者は非常に重い成分を多く含むため、簡単には蒸発しません。
分子が小さい成分 → 沸点が低い → 塔の上側へ進みやすい
分子が大きい成分 → 沸点が高い → 塔の下側で回収されやすい
ただし、炭素数だけで石油製品の性質が完全に決まるわけではありません。
枝分かれした構造や環状の構造を持つ分子もあり、実際の製品は多様な炭化水素と添加成分から成り立っています。
沸点と分子の大きさの関係は、分留の基本をつかむための重要な見方です。
それを土台にすると、製品ごとの粘り気、燃えやすさ、用途の違いも理解しやすくなります。
分別蒸留と単純蒸留の違い
続いては分別蒸留と単純蒸留の違いを確認していきます。
蒸気と液体の接触回数による分離精度
分別蒸留は、蒸気と液体を何度も接触させることで、沸点が近い成分もより細かく分ける蒸留法です。
単純蒸留では、混合物を加熱して生じた蒸気を一度冷やし、液体として回収します。
沸点の差が大きい混合物なら単純蒸留でも分けやすいものの、原油のように多くの成分が混ざる場合には十分ではありません。
分別蒸留では、分留塔の棚板や充填材によって蒸発と凝縮が繰り返されます。そのため低沸点成分ほど濃縮された蒸気が上部へ進みます。
この仕組みは、何度も蒸留を重ねる操作を塔の内部で連続的に行うイメージです。
| 比較項目 | 単純蒸留 | 分別蒸留 |
|---|---|---|
| 主な対象 | 沸点差が大きい混合物 | 沸点が近い成分を含む混合物 |
| 蒸発と凝縮 | 基本的に一度ずつ | 塔内で繰り返す |
| 装置 | 蒸留フラスコ、冷却器など | 加熱炉、分留塔、冷却設備など |
| 分離の細かさ | 比較的粗い | 比較的細かい |
| 代表的な利用 | 実験室の分離、溶媒の回収 | 原油精製、液体空気の分離 |
原油の精製で分別蒸留が使われるのは、多数の成分を連続して効率よく分ける必要があるからです。
単純蒸留と分別蒸留の違いは、冷やして集める回数と、分離の精度にあると覚えるとよいでしょう。
常圧蒸留と減圧蒸留の使い分け
高い温度では変質しやすい重い成分は、圧力を下げて沸点を低くする減圧蒸留で分けます。
常圧蒸留は、ほぼ大気圧の条件で原油を分留する基本工程です。
ここで取り出しにくい重い残油は、さらに高温にすると熱で分解したり、性質が変わったりするおそれがあります。
そこで圧力を下げると、液体はより低い温度で沸騰しやすくなります。この原理を利用するのが減圧蒸留です。
減圧蒸留では、残油から真空軽油や減圧残油などを得ます。
真空軽油は後の分解工程の原料になり、減圧残油は重油やアスファルトなどに関係する成分になります。
減圧蒸留は、重い成分を過度に加熱せずに利用するための次の工程です。
圧力を下げると沸点も下がるという関係は、石油精製以外の化学工業でも活用されています。
分留温度だけを見るのではなく、圧力条件も分離の結果を左右する要素だと理解しておきましょう。
石油精製と分留の仕組みのまとめ
石油精製とは、原油を分留などの工程で用途別の製品へ変える技術です。
中心となる分留では、炭化水素の沸点の違いを利用し、低沸点の成分ほど分留塔の上側で回収します。
原油は単一の物質ではなく多くの成分の混合物なので、製油所では温度範囲を目安に留分として取り出します。
灯油、軽油、重油などは回収される高さや温度帯が異なり、それぞれに適した用途があります。
近代の石油精製は灯火用の燃料から発展し、自動車、航空、化学工業の需要に応じて高度化してきました。
分別蒸留は蒸気と液体を繰り返し接触させるため、単純蒸留より細かな分離に向いています。
さらに重い成分には、圧力を下げて沸点を下げる減圧蒸留が使われます。
ガソリンスタンドや灯油タンクを見かけたときは、原油から製品へ至る分留塔の流れを思い浮かべてみてください。


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