体心立方格子とは?わかりやすく解説!(英語表記)
金属の原子は、ばらばらに並んでいるのではなく、一定の規則に従って立体的な配列をつくっています。
その代表例の一つが、鉄などに見られる体心立方格子です。
名称は難しく見えますが、立方体の頂点と中心に原子を置く模型を思い浮かべると、基本的な形を理解できます。
この記事では、体心立方格子の英語表記、単位格子の構造、充填率、代表的な金属、面心立方格子との違いを順に解説します。
体心立方格子の意味と基本構造

それではまず体心立方格子の意味と基本構造について解説していきます。
体心立方格子の定義と英語表記
体心立方格子とは、立方体の8つの頂点と立方体の中心に原子が配置された結晶構造です。
体心立方格子は、英語で body-centered cubic lattice と表記します。
略して BCC と呼ばれることが多く、body-centered は体心、cubic は立方の意味を持ちます。
結晶学では、lattice を省いた body-centered cubic という表現も広く使われます。
ここでいう格子とは、原子やイオンなどが空間内で繰り返し並ぶ規則的な骨組みのことです。
実際の原子は点ではなく大きさを持っていますが、構造を考えるときは原子の中心を格子点として扱います。
体心という名前は、立方体の内部のちょうど中心に格子点があることに由来します。
頂点だけに原子がある単純立方格子とは、この中心原子の有無が大きな違いです。
学術資料や材料分野では、略号の BCC も重要な検索語になります。
金属材料の性質を調べる際には、元素名だけでなく BCC かどうかを確認すると、強さや変形の特徴を考えやすくなります。
たとえば純鉄は温度によって結晶構造が変わるため、同じ鉄でも使用温度によって原子配列への理解が必要です。
単位格子と原子の数え方
体心立方格子を理解する基本単位が、単位格子と呼ばれる立方体です。
単位格子を縦横高さの方向へ繰り返すと、大きな結晶全体の配列を表せます。
立方体の頂点には8個の原子が描かれますが、各頂点の原子は8つの隣接する単位格子で共有されています。
そのため、1つの単位格子に属する頂点原子は、1個につき 8分の1 個として数えます。
頂点原子全体の寄与は、8個に 8分の1 を掛けて 1個になります。
一方、立方体の中心にある原子は他の単位格子と共有されないため、そのまま 1個として数えます。
頂点原子 8 × 1/8 = 1個
体心原子 1個
単位格子あたりの原子数 1 + 1 = 2個
したがって、体心立方格子の単位格子あたりの原子数は2個です。
模型で見ると原子が9個あるように見えますが、頂点の原子をすべて自分だけのものとして数えない点が重要です。
この共有関係を見落とすと、密度や充填率を求める計算で大きな誤差が出ます。
原子同士の接触方向
体心立方格子では、原子は立方体の辺に沿って接しているわけではありません。
接触しているのは、立方体の一方の頂点から反対側の頂点へ伸びる体対角線の方向です。
体対角線上には、頂点原子、中心原子、反対側の頂点原子が一直線に並びます。
原子半径を r、単位格子の1辺の長さを a とすると、体対角線の長さは √3a です。
一方、接触する3つの原子を通る長さは原子半径4個分なので、4r になります。
√3a = 4r
a = 4r/√3
a 単位格子の1辺の長さ
r 原子半径
長さの単位は a と r でそろえます。
この関係は、原子半径から格子定数を求めるときや、単位格子の体積を計算するときに使います。
たとえば原子半径がわかっていても、辺の長さを単純に原子半径の2倍とすることはできません。
体心立方格子では接触方向が体対角線であるため、原子の並び方に応じた幾何学的な関係式を使う必要があります。
体心立方格子の配位数と充填率
続いては体心立方格子の配位数と充填率を確認していきます。
配位数と最近接原子の関係
配位数とは、ある原子に最も近い距離で接している原子の数を指します。
体心立方格子の配位数は8です。
中心の原子に注目すると、立方体の8つの頂点にある原子がすべて同じ距離にあります。
反対に頂点の原子から見れば、周囲の単位格子にある8個の中心原子が最近接原子になります。
このように、どの原子を基準にしても最近接原子が8個となる点が、BCC構造の特徴です。
体心立方格子では、1個の原子が8個の最近接原子に囲まれています。
配位数が大きいほど必ず材料が硬いとは限りませんが、原子間の詰まり方を比較する重要な目安になります。
単純立方格子の配位数は6であり、体心原子を加えることで周囲との接触関係が増えていることがわかります。
面心立方格子や六方最密構造の配位数は12で、BCCより多くの原子に囲まれています。
BCCの配位数は8であり、原子の接触の様子を知る基礎指標になります。
配位数を覚えるときは、立方体の中心から8つの角を見渡すイメージを持つと、数字だけを暗記するより理解しやすいでしょう。
充填率の求め方
充填率は、単位格子の体積のうち原子が占める割合です。
原子を重なりのない球とみなして計算するため、結晶構造ごとの原子の詰まり具合を比較できます。
体心立方格子には単位格子あたり2個の原子があるため、原子の体積は球2個分です。
球1個の体積は 4πr³/3 なので、原子全体の体積は 8πr³/3 となります。
単位格子の体積は a³ であり、a = 4r/√3 を代入して求めます。
原子の体積 2 × 4πr³/3 = 8πr³/3
単位格子の体積 a³ = 64r³/3√3
充填率 原子の体積/単位格子の体積
充填率 π√3/8 ≒ 0.68
約68パーセント
体心立方格子の充填率は約68パーセントです。
残りの約32パーセントは原子が占めていない空間であり、結晶内部にはすき間が存在します。
ただし、このすき間は空洞のように自由に使える場所ではなく、原子の熱振動や欠陥とも関わる微小な空間です。
密度計算に必要な考え方
結晶の理論密度は、単位格子に含まれる質量を単位格子の体積で割って求めます。
体心立方格子の場合、単位格子中の原子数は2個であることを使います。
元素のモル質量を M、アボガドロ定数を N、格子定数を a とすると、理論密度は 2M/Na³ で表せます。
Mをグラム毎モル、aをセンチメートルでそろえると、密度はグラム毎立方センチメートルになります。
実測密度が理論値と異なる場合は、空孔、介在物、組成変化、測定条件などを検討します。
単位格子の数だけでなく、原子量と長さの単位まで確認することが大切です。
| 確認項目 | 体心立方格子で使う内容 | 注意点 |
|---|---|---|
| 単位格子中の原子数 | 2個 | 頂点原子は共有分を考慮する |
| 単位格子の体積 | a³ | aの単位を統一する |
| 原子1個の質量 | M/N | モル質量の単位を確認する |
| 理論密度 | 2M/Na³ | 実測値との差は欠陥も考える |
たとえばミリメートルで与えられた格子定数を、そのままセンチメートルの密度式に入れると桁が大きくずれます。
結晶構造の計算では、原子数、体積、単位の3点をセットで確認することが基本です。
代表的な金属と温度による構造変化
続いては体心立方格子をとる代表的な金属と温度変化を確認していきます。
常温付近で見られる代表元素
体心立方格子は、多くの金属元素に見られる代表的な結晶構造です。
代表例として、鉄、クロム、タングステン、モリブデン、バナジウム、ニオブなどが挙げられます。
ただし、元素がBCC構造をとるかどうかは温度や圧力によって変わる場合があります。
したがって、元素名だけを見て常に同じ構造と決めつけるのは正確ではありません。
鉄は身近な材料ですが、常温付近の純鉄はフェライトと呼ばれるBCC構造をとります。
タングステンは高い融点を持つ金属として知られ、BCC構造を持つ代表例です。
| 元素 | 元素記号 | 常温付近の代表的な構造 | 利用例 |
|---|---|---|---|
| 鉄 | Fe | 体心立方格子 | 鋼材、機械部品 |
| クロム | Cr | 体心立方格子 | 耐食性向上用の合金元素 |
| タングステン | W | 体心立方格子 | 電極、耐熱部材 |
| モリブデン | Mo | 体心立方格子 | 特殊鋼、耐熱合金 |
| バナジウム | V | 体心立方格子 | 高強度鋼の添加元素 |
表に挙げた元素も、合金化すると純元素とは異なる相や複数の組織をつくることがあります。
材料を扱う場面では、元素そのものの構造と、実用合金としての組織を分けて考えることが重要です。
鉄に見られる結晶構造の変化
純鉄は温度の変化に伴って結晶構造が変わる代表的な金属です。
常温から912℃付近までは、フェライトと呼ばれるBCC構造が安定します。
912℃付近から1394℃付近では、オーステナイトと呼ばれる面心立方格子の構造になります。
さらに1394℃付近から融点までの範囲では、再びBCC構造となり、デルタ鉄と呼ばれます。
この構造変化は、鉄鋼材料の熱処理や組織制御を考える基礎になります。
加熱や冷却の途中で炭素などの元素がどの程度入り込めるかは、結晶構造によって変化します。
鉄鋼の焼入れや焼なましを理解するには、温度と結晶構造の関係が欠かせません。
家庭用品や建築材料に使われる鋼も、製造時には加熱と冷却を経て組織を調整されています。
目に見える形は同じ金属でも、内部の原子配列が温度で変わる点が、材料科学の興味深いところです。
変形しやすさと低温での注意点
金属が塑性変形するときは、原子面がずれ動くすべりが起こります。
BCC構造にもすべり系はありますが、原子が密に並ぶ面の特徴はFCC構造とは異なります。
そのため、BCC金属は温度によって変形のしやすさが変わりやすい傾向があります。
特に一部のBCC金属では、低温になると急に粘り強さが下がり、脆性的に破壊しやすくなることがあります。
これを延性脆性遷移といい、低温環境で使う構造材料では重要な検討事項です。
すべてのBCC金属が同じ温度で同じ挙動を示すわけではなく、純度、結晶粒、合金元素、加工履歴も影響します。
たとえば厚い鋼板や溶接部では、使用温度に応じた靭性評価が行われます。
BCC構造は、原子配列だけでなく材料の低温特性を考える手がかりにもなります。
一方で、BCC構造だから必ず脆いという理解は誤りです。
用途に合わせた成分設計や熱処理によって、強度と粘り強さのバランスを調整できるからです。
面心立方格子と六方最密構造との比較
続いては体心立方格子と他の代表的な結晶構造の違いを確認していきます。
単純立方格子と面心立方格子の配置
結晶構造を比べるときは、原子がどこに置かれているかを最初に見ると整理しやすくなります。
単純立方格子は、立方体の8つの頂点だけに原子がある構造です。
体心立方格子は、頂点に加えて立方体の中心にも原子があります。
面心立方格子は、頂点に加えて6つの面の中心に原子が配置されます。
面の中心の原子は2つの単位格子で共有されるため、FCCの単位格子あたりの原子数は4個です。
BCCでは中心原子が1個加わるのに対し、FCCでは各面に原子が加わるため、原子の詰まり方が大きく異なります。
金、銀、アルミニウム、銅などは、代表的なFCC金属として知られています。
原子模型を紙に描くときは、見えていない奥側の頂点や面もあることを意識すると、立体的な配置を誤りません。
BCCとFCCの違いは、立方体の中心に原子があるか、面の中心に原子があるかという配置にあります。
名称が似ているため混同しやすいですが、body-centered と face-centered の意味を対応させると覚えやすくなります。
配位数と充填率の比較表
配位数と充填率を並べると、各結晶構造の特徴を数値で比べられます。
BCCの配位数は8、充填率は約68パーセントです。
FCCと六方最密構造は、どちらも配位数12、充填率約74パーセントです。
六方最密構造はHCPとも呼ばれ、マグネシウムや亜鉛などに見られます。
| 結晶構造 | 英語略号 | 単位格子中の原子数 | 配位数 | 充填率 |
|---|---|---|---|---|
| 単純立方格子 | SC | 1個 | 6 | 約52パーセント |
| 体心立方格子 | BCC | 2個 | 8 | 約68パーセント |
| 面心立方格子 | FCC | 4個 | 12 | 約74パーセント |
| 六方最密構造 | HCP | 慣用単位格子で6個 | 12 | 約74パーセント |
FCCとHCPは最も密に近い原子配列であり、BCCより充填率が高くなります。
ただし、充填率が高いことだけで、強度、加工性、耐食性などのすべてを判断することはできません。
材料の性能は結晶構造に加え、結晶粒の大きさ、不純物、析出物、加工状態など多くの要因で決まります。
覚え方と混同しやすいポイント
BCCを覚えるときは、立方体の体の中心に原子が1個あると考えるのが基本です。
英語の body は人体だけでなく、物体の本体や内部全体を表す語としても使われます。
FCCは face が面を意味するため、立方体の面の中心に原子がある構造だと整理できます。
BCCの単位格子に描かれる原子は、頂点8個と中心1個の合計9個に見えます。
しかし、実際に単位格子に属する原子数は2個なので、図の見た目と計算上の数を混同しないようにしましょう。
充填率についても、68パーセントという数字だけを覚えるより、BCCは最密構造ではないと理解する方が応用しやすくなります。
BCC 立方体の中心に原子がある
FCC 立方体の面の中心に原子がある
HCP 六角形の層が密に重なる
BCCの原子数 2個
BCCの配位数 8
図では原子の位置を確認し、計算では共有される割合を確認するという順序が混乱を防ぎます。
授業や試験では、原子数、配位数、充填率、接触方向を一組として整理すると、問題文の表現が変わっても対応しやすくなります。
体心立方格子の意味と使い方のまとめ
体心立方格子とは、立方体の8つの頂点と中心に原子が配置された結晶構造であり、英語では body-centered cubic lattice、略してBCCと表記します。
単位格子中の原子数は、頂点原子の共有分と中心原子を合わせて2個です。
原子は体対角線の方向で接触し、辺の長さ a と原子半径 r には √3a = 4r の関係があります。
BCCの配位数は8、充填率は約68パーセントで、FCCやHCPの最密構造とは原子の詰まり方が異なります。
鉄、クロム、タングステンなどは代表的なBCC金属ですが、鉄のように温度によって結晶構造が変わる元素もあります。
材料の性質を考えるときは、元素名だけでなく、温度、合金組成、結晶構造を合わせて確認することが大切です。
まずは立方体の中心に原子がある図を描き、原子数2個、配位数8個、充填率約68パーセントを結び付けて覚えてみてください。


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